いつまで音楽人生?
以前、ある人(アマチュアではあるが一応楽器をやっている人)から、「今でも練習なんかされるんですか?」と言われたことがある。練習もしないで演奏活動できる人が、世界中のどこにいるのだろう?どんなに優秀な一流のピアニストでも、毎日毎日、猛練習しているんだということを、その人は知らないらしい。ある程度のところまで到達した人は、練習なんかしなくても弾けるのだと思っているんだ。あ〜あ、そうだったら何と楽なことか。
またある時、生徒の母親に、演奏会に来てもらいたくてチラシを渡したところ、「先生、まだそんなことされるんですか?」・・・・・そのお母さん、娘を音大に入れようと思うほど音楽に理解がある人だと思っていたのに・・・・・音大に入るまで、あるいは在学中までは練習して、卒業したら練習も卒業、と思っている人も結構多い。また、実際そんな卒業生もよくいるのだ。卒業したら、ピアノの先生になって、教えることだけで忙しく、自分が弾く暇はない(?)、と言っている人もいる。まあ、いろんな人生があるだろうから、みんながみんな私みたいに、いつまでも練習練習という日々を過ごす必要もないわけだけど、ただ、ピアノに限らず楽器をやっている者は、日々の練習を怠ると、てきめんに弾けなくなっていくことだけは確かだ。
それにしても、この練習というものは、やたらと時間がかかり、それも大きな演奏会の前ともなると、1日24時間では足りないと思うこともあったりするが、この姿は、一般的に見ると、やや異常といえるかもしれない。そういった習慣のない人達から見ると、「ちょっとおかしいんじゃないの?」と思われるかもしれないし、きっと理解はしてもらえないと思う。現に、私の家族ですら、演奏会が近づいて家事をしている余裕はないなどということは、未だに理解はしていない。そして、私を音楽の道に進めさせた母ですら、「音楽なんかやらせるのじゃなかった。女として普通の生活をした方が幸せだったのに。」と言う。いつになったら、音楽なんか捨てて、普通の主婦になってくれるだろうかと待っているのだ。
増してや、一緒に生活していない人は、「今、演奏会の前で忙しいので出来ません。」と言われても、内心、1日中ピアノばっかり弾いているわけじゃないのだろうから、少しくらいの時間がとれないわけはない、と思って当然だ。
また、「山下さんの人生、それでいいのかな〜?」と心配して下さる方もある。音楽以外にも、いろいろしなければならないことがあるのじゃないかと。でも、この私でも、この年になるまでには、結構いろいろなことをしてきたのだ。一応恋愛も失恋も経験し、結婚して子供も産み育て、音楽以外のことに走った時期もあり、旅行も時々はし、読書は好きで、外出時には必ず文庫本をバッグに入れて、電車に乗っている間は読書時間だし、新聞で悲しい出来事を読めば涙し、世の中の理不尽な動きに怒り・・・・・こう書いてくると、私って結構まっとうな生活をしているんじゃない?・・・・・
いったい何歳までピアノを弾きつづけられるんだろう、と考える年頃になった今、やはり、できる間はできるだけ音楽に専念したいと思う。できなくなる時が、いつ来るかわからないのだから。