譜めくり嫌い
ピアノ独奏の場合は、一般的に暗譜して演奏することが多いので、譜めくりの必要はないが、伴奏や室内楽などの場合は、譜めくりをお願いしなければならない時がある。私は、譜めくりをしてもらうことが、あまり好きでないので、極力自分でめくれるように、いろいろ工夫をする。演奏会前の貴重な練習時間を削ってでも、自分でめくれるようにするための作業に時間をかけることがある。まず楽譜をコピーしたものを切り刻んで、A4またはB4の紙に、びっしりと貼っていく。譜めくりの回数を減らすために、できるだけ隙間なく。そして、譜めくりの個所には、少し長い休符か長く伸ばす音符があるところを持ってくるようにする。
ほとんどの場合、それで乗り切れるが、テンポの速い曲や、長い休符も伸ばす音符もないような曲の時は、どうしても譜めくりをお願いしなければならなくなる。
前にも書いたように、私は譜めくりをしてもらうことが好きではない。まず、すぐ横に人がいること自体、気になって曲に集中できない。おまけに、譜めくりをして下さる人が緊張するタイプの場合、その緊張が伝わってくるのだ。上手くめくらなくては、という意気込みと、上手くめくれるだろうかという不安が、めくり方に表れる。そして、おっとりがたの人は、めくるタイミングが遅いし、せっかちな人は、早くめくり過ぎる。そして、手先が器用でない人は、時に2枚一緒にめくってしまったりもする。
こんな勝手なことを書いたら、譜めくりをしてもらえる人がいなくなるかも。
先日、非常に風の強い日、野外ステージでの伴奏だった。以前に、やはり台風がきている時に野外ステージで、譜面台ごと飛んでしまったことがある。こんな時は、譜めくりはイヤなんて言ってられない。洗濯バサミやクリップで譜面をはさみ、1ページめくるごとに、クリップをはずし、またクリップで留めてもらわなくてはならない。大変な作業だ。急にお願いした譜めくりの方は、リハーサルだけで胃が痛くなったと言っていた。本当にご苦労様でした。
実を言うと、横にいてもあまり気にならず、一番タイミング良くめくってくれる、専属の譜めくりがいるのだ。娘だ。彼女が小学生の頃から、よくめくってもらったし、大きな演奏会の時などは彼女でなくては困る。しかし、いつも一緒に連れて行くわけにもいかない。彼女にも仕事があり、予定もあるから。