難曲
今まで、何度か難曲(むずかしい曲)と言われる曲にぶつかり、苦労をしてきた。難曲にも二通りあって、難しくても何とか弾いてみたいと、猛烈な練習を積み重ねて演奏会にかけた、自分自身の思い入れのある曲と、仕事として伴奏を依頼された曲が、とてつもなく難しい曲だったというものとがある。一つ目の方は、ラヴェル:ラ ヴァルス、ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲、パガニーニの主題による狂詩曲、フランク:ソナタ、二つ目の方は、マリンバの伴奏でクレストン:協奏曲、声楽の伴奏でR.シュトラウス:(曲名は忘れた)、ラフマニノフ:春の流れ・・・ラフマニノフという人は、どうしてこんなに難しく書くのだろうと思うが、彼は人並みはずれたテクニックを持つピアニストだったのだから、歌曲ではあっても伴奏ピアノを難しく書きたくなったのだろう。また、長い時間の余裕がある場合は、多少難しくても、コツコツ練習を積み重ねることができるが、短期間で仕上げなければならない時は、悲愴だ。クレストンがそうだった。それも、12月の忙しいシーズンで、出て行く日が多くて、練習時間もあまりとれない時だったから、本当に大変だった。また、同時期に別の難曲を同時進行しなければならない時は、もっと深刻だ。スケジュールというものは、自分に都合がいいようには入ってくれない。今も実は、ラフマニノフの歌曲数曲の楽譜を本番の1ヶ月前にもらい、奮闘しているところへ、レガーテが林光さんに委嘱した合唱組曲「木」が出来上がってきた。その9章、10章のピアノが、なんと難しいこと!もうコンサートまで1ヶ月程しかないというのに。また、私の苦難の日々が続く。