練習
楽器というものは、日々練習を積まなければならない。テクニックを維持するためだけにでも、
例えばピアノなら、1日に2・3時間は必要だと言われている。旅行などで、練習できない日が
1週間でも続くと、悲惨なことになる。指がボケてしまうのだ。元に戻すのに何日もかかってし
まったりする。またその上に、新しい曲を弾かなければならない時は、その曲の難易度にもよ
るが、難しい曲なら、まず楽譜通りに弾けるまでに何日もかかり、それを自分のものにして完
成させるには、また何日もかかったりする。初見で弾けるような簡易な曲は別にして、音が多
く、テンポが速く、複雑な和音があったりする曲は、ものにするのに本当に時間のかかるもの
だ。楽器と一口に言っても、ヴァイオリン、チェロ、フルートその他の管楽器など、ほとんど単音
でメロディーを奏でるものは、まず良い音を出す難しさはあるが、楽譜上の難しさを克服するこ
とには、ピアノほど時間はかからないのではないだろうか。もちろん、ヴァイオリンの超絶技巧
の曲などは別だけど。
また、それらの独奏楽器とピアノのためのソナタなど、ほとんどの場合ピアノの方が難しい。
こういう話になると、ピアノは鍵盤をたたけば音が勝手に鳴るじゃないか・・・と言われる。
これは半分正しく、半分間違っている。ドレミファソラシドと、見た目にもわかり易く順番に鍵盤
が並んでいて、ほんの初歩の子どもでも、1本指ででも音が鳴らせるので、ある意味では簡単
だ。しかし、ピアノを本当に音楽的な美しい音で、情感を込めて演奏するのは、そんなに簡単で
はない。結局、何の楽器でも、いい音でいい演奏をするには、それなりの努力が必要であるこ
とは確かなのだが・・・
コンサートに向けて練習している、ある曲を、娘(フルート)が、ちょっと練習して「あ、もうこれ出
来た」と言うものだから、つい「フルートは簡単でいいね」と言ってしまった。ピアノは、とても複雑
で、猛練習しなければならなかったからだ。すると娘は怒った。「簡単じゃないよ」と。言葉の使い
方が悪かったのだけど、簡単という意味は、少しの時間でできてしまうという意味で、それがイコ
ール容易というわけではないのだ。一緒に音楽している娘でも、この問題ではいつもぶつかる。